ここでは、マンション管理組合の業務内容や、組合員の義務などについて解説します。
マンション管理組合とは、住人の共益を目的としたマンション内の組織のことです。
区分所有法という法律によって設立が義務付けられており、マンションの分譲所有者は、必ず管理組合に加入しなければなりません。
管理組合の業務内容は、たくさんあります。
主なものは、エレベーターや駐車場、施設など共益部分の維持管理、組合員からの管理費・積立金の徴収や運用、防災管理、風紀維持などです。
また、専有部分であっても、その管理が共益に関係してくるものについては、管理組合が規制できることになっています(区分所有法)。
たとえば、専有される排水管、室内火災報知器など、たとえ室内の占有物であったとしても、共用設備の一部として管理したほうが適当と思われるものです。
なお、新たなマンションが建設されると、物件の引き渡しと同時に管理組合が設立され、早いものでは、物件引渡し前の入居説明会の際に設立される場合もあります。
マンションの管理を行うにあたって、絶対に避けては通れないのが「会計」に関する知識です。マンションの維持管理には、さまざまな費用が必要となります。管理人や管理会社に支払う料金以外に、共有スペースである廊下の電灯を取り替えるための費用、エレベーターのメンテナンス費用、外壁の再塗装工事にかかる費用などです。
ここでは、マンション管理の会計に関する基本的なルールである、「特別会計」と「一般会計」の違いについて説明します。
マンション管理における会計処理には、「特別会計」と「一般会計」の2つの種類があります。通常の営利企業であれば、利益や損失といったもっと細かな会計上の処理や区分が必要となりますが、マンションの場合、金銭の流れは「区分所有者から費用を徴収し、徴収したお金を必要な出費にあてる」だけです。
金銭の出入りだけを記録する、非常にシンプルな考え方で会計が管理できるため、会計に詳しくない人でも簡単に理解することができるでしょう。
マンション管理に必要な出費は、「毎月必要な細々とした出費」である管理費と、「数年に一度必要となるメンテナンスや修理のための出費」である特別修繕費にわけることが可能です。
管理費(毎月必要な細々とした出費)の管理を行うのが「一般会計」、特別修繕費(数年に一度必要となるメンテナンスや修理のための出費)を管理するのが「特別会計」となります。これらをわざわざ分けているのは、毎月必要な小さな出費と、たまに必要な大きな出費を別々に管理したほうが、金銭の管理が簡単だからです。
マンション管理において、会計を一般会計と特別会計に分けなければならない義務はありません。
基本的に、マンション管理において一般会計と特別会計を分けていない管理組合は存在しません。
一般会計として、どのような費用を計上することになるのか実例をご紹介します。一般会計は、月々発生する収入や支出に関する会計です。
収入に関しては、
を計上します。
一方、支出は、
などです。
マンションの所有者から徴収する管理費は、必要な支出の額から年間の予算を組んで月々の金額を決めることになります。節約のためにギリギリの予算案を組むと、一般会計からお金を出してトラブルの対処をしたり、住民交流のためのイベント費用などを用意したりすることができないため、多少余裕をもって予算を組むことも重要です。
特別会計として計上する収入は、
が基本となります。
そのほかに必要な積立金があれば、マンションごとに費用項目をつくり、管理費とはべつに徴収しても構いません。
出費に関しては、
となります。
大規模修繕工事などは、おおよそ10年に一度必要となる大掛かりな工事なので、ある程度の見積もりを出しておいて、毎月少しずつ積み立てていきましょう。
マンション管理組合の組合員には、法律で決められた、いくつかの義務があります。
まず、管理組合に加入する義務です。
マンションの区分所有者は、必ず管理組合に加入しなければなりません。
管理組合から脱退して良いのは、区分所有を放棄するとき、つまりマンションを売却するときだけです。
また、マンションの区分所有者は、管理組合の役員に選ばれうる義務を負いますが、役員の選出は、立候補、推薦、持ち回りなどマンションによって異なります。
選出された複数の役員で理事会を運営し、各種の業務を行います。
マンション管理組合は、区分所有法という法律に基づいて設立されるものですので、形骸化すべきものではありません。
住人の快適な生活を維持するために、共益部分については、概ね上で述べた業務を遂行する義務を負います。
しかしながら、理事会の役員にも生活があり、本業があります。
規模の大きいマンション管理組合の役員になると、とても理事会だけで業務をできるものではありません。
そこで、通常はマンション管理会社に、業務の一部を委託します。
現在、全国の9割以上のマンションにおいて、管理会社を利用しているのが現状です。
マンション管理会社を利用するにあたり心得ておきたいのは、あくまでもマンションは区分所有者それぞれの財産ということです。
管理組合に業務や意思決定を丸投げするのではなく、必ず理事会や組合員の意思を入れましょう。
マンションの管理は想像しているよりもやるべきことが多く、今は管理会社への委託が主流でしょう。
一方、管理委託費の支払いがあるため、自主管理運営で管理費のコストを抑えているマンションも間違いではありません。自主管理におけるメリット・デメリットをご紹介します。
コミュニティを築く
自主管理になると住民どうしで管理していくため、それぞれに意識を持ってコミュニケーションをはかるようになります。顔を合わせて話し合ったり、みんなで集まって清掃作業をする場合もあるでしょう。マンションの中で、自然とコミュニティが作られていくのです。
ただ、コミュティは必ずしも全員の同意があるわけではありません。仕事や子育てで忙しくしている現代人にとって、こうした集まりを煩わしく感じる人もいます。
管理費の低コスト化
管理会社に委託をしない場合は、自分たちの持ち回りなどで会計業務や管理運営業務などを行います。そのため人件費の負担も少なくてすむでしょう。管理費用に何が含まれているかはそれぞれですが、毎月の家賃を抑えられます。
建物の点検や修繕が必要になったときの対応
新築のマンションであっても、建物の定期的なメンテナンスは必要不可欠です。築年数が古い場合は点検作業を怠ってしまうと、大きな修繕をしなければならないくらい傷んでしまうことも珍しくありません。
自主管理でそうなってしまったら、考えている以上に面倒なことになります。「修繕費用をどうするか」「誰が責任をとるのか」現実的に考えても、住民がマンション管理だけに時間を費やすことはできません。そのためすぐに対応できないケースも多々あり、後回しになってしまうこともあるのです。
住民の高齢化に伴う管理の難しさ
子育て世代だけのマンションも自主管理の難しさはありますが、高齢者の多いマンションは同じように機動力の低さが叫ばれています。
計算間違いや思い込みによる出納業務のミス、急な体調不良による欠席など、どれも仕方のないことですが自主管理をしていくうえで残っている住民へ負担をかけてしまうことは事実です。
新築であれば修繕するところはなく、面倒な管理もそれほど必要ありません。また、入居世帯が少ないのであれば、住民どうしの協力で運営することも無理ではないでしょう。お互い助け合うこともできるため、絆が深まったりもします。
住人が多ければ多いほど、さまざまな要求が生まれてきます。それぞれに応じていれば、自主管理では追いつけません。すべての人間関係を把握するところまでは難しいため、第三者として管理会社が間に入って解決したほうがスムーズなのです。
中古物件は、修繕しなければいずれ維持できなくなります。配管や外壁などの目に見える場所はまだ大丈夫かもしれませんが、内部の構造に問題が起きてしまったら、専門家の知識がなければ対応が難しくなるでしょう。自主管理の範囲を越えてしまうので、管理委託費を支払ってでも管理会社に任せたほうが得策といえます。