マンションの管理組合と管理会社との間でトラブルが起きるのは珍しいことではありません。ここでは実際に起こりがちなトラブルの事例や管理会社を変更した事例を4つご紹介します。
管理組合はマンションの住人による組織であり、管理会社は管理組合からの発注を受けて管理業務を行う受託業者です。
簡単にいえば、「客と業者」の関係ですので、利益が一致することもあれば、反することもあるのはむしろ当然のことなのです。そして、ここがトラブルの出発点といえるでしょう。
ある関西地方のマンションでは、「管理費を値下げできないか」という管理組合からの打診に対し、管理会社は最初に値下げ前と大差ない金額を提示してきました。
これに不満を感じた組合は再度値下げを要請し、管理会社も前回よりは大きな値引き額を提示したのですが、内訳を見てみると、驚く事にそれは管理レベルを下げた事による値下げだったのです。
そのような経緯があり、今の管理会社との契約は諦めて複数社の見積もりを取って検討していたところ、今の管理会社は管理レベルを据え置きのままで最終的な管理費を出してきました。
しかし、時既に遅し。最終的に見積もりの中から、別の管理会社と契約を結びました。
このケースで問題なのは、値下げの内容です。管理組合の理想は、管理レベルが変わらず管理費が安くなる事です。
ところが、管理会社が提示した値下げ後の管理費の内訳を見ると、清掃員減員等のレベルを下げたため管理費も下がっただけのことだったのです。
管理組合は限られた予算の中から上質な管理を得意とする管理会社を求めます。
一方で、管理会社は競合他社との値引き合戦に巻き込まれることもあり、コスト管理は重大な問題です。それでも、交渉においては誠実さが重要です。
今回の管理会社の対応は非常に不誠実なものとなり、それゆえ管理組合は低価格でスペックの高い別の会社と契約を結ばざるを得なくなりました。
管理人の態度が悪いという話と共に多いのがフロントマンの対応の悪さです。
こちらも関西のマンションの事例になりますが、本件もフロントマンが話を聞く気がないのか、重要な事を忘れるということが多々ありました。
管理会社にクレームを入れてみても表面的な謝罪をするだけで改善した様子は見られず、しかしこのような状況を放置するわけにもいかなくなり、管理組合として管理会社の変更という最終手段に出ることになりました。
どの会社にも不良社員はいるのかもしれませんが、こういう従業員がいるにも関わらず担当替えをしないのであれば杜撰な会社と取られても仕方ありません。
しかし、すぐに管理会社の変更をするのではなく、まずは別のフロントマン、あるいは管理人に対応をお願いしてみるという手段もあります。
それでも「代わりがいない」「対応出来ない」となってしまった場合の最終手段として、管理会社自体を変えてみる方法も良いでしょう。
マンション管理のプロとして、管理組合と住人とを繋ぐ役割を担っているのがマンションのフロントマンです。業務内容も非常に多く、管理組合へのサポート業務に毎日のメンテナンス、滞納者への督促や業務を遂行する管理人の管理監督などもマンションフロントの仕事でしょう。
以下では、フロントマンの重要性や、どのようなフロントマンであれば安心なのかなどを紹介します。
マンション管理会社を選択するにあたり、優秀なフロントマンが在籍しているかどうかは非常に重要です。管理会社と居住者の間に立ち、マンション管理における業務を幅広くサポートするフロントマンは、管理運営をより円滑にするのに欠かせない存在となります。
フロントマンの業務には、理事会からの要望や各マンションの管理人の指導、設備業者への対応といった高いコミュニケーション能力とソーシャルスキルが必要となるものがあるでしょう。もし、良いフロントマンと出会えない場合、マンションの資産価値を保てない可能性があります。そのため、広範囲で尽力してくれるフロントマンは、マンション管理において非常に重要です。
フロントマンの業務は多岐にわたるため、素早さと正確性のある作業ができる人が最適です。基本的に1人で複数のマンションを担当するケースが多いため、1つのマンションの業務にかかりきりでは別のマンションの業務まで手が回らなくなってしまうでしょう。そのようなことが無いよう、1つ1つの作業をスピーディーかつ正確にこなせる人が向いています。
また、マンションの管理には法律の知識も必要です。管理費や修繕積立金の徴収や明瞭な会計情報の報告など、会計の知識も必須と言えます。そのため、幅広い知識のある人がフロントマンであれば、業務を円滑に進められるでしょう。
その他にも、住民や管理人、管理会社や設備会社とのスムーズなやりとりができるなど、高いコミュニケーション能力を有する人も、安心して業務を任せられるフロントマンになります。
関東地区のあるマンションの事例です。建築から長い年月が経過しており、その間はずっと同じ管理会社に委託していました。
管理そのものに不満があるわけではなかったため、当然管理会社を変更しようという話が出てくることもありませんでした。
しかし、今の管理費が妥当なものなのかがわからないこともあり、他社の見積もりを取ってみることになったのです。
結論としては、明らかに管理費を下げる事が出来る管理会社に変更という流れに至りました。
実はマンション管理に限らず、携帯電話や保険など継続契約のサービスでは、契約当時そのままの価格で長年の取引をしていることは珍しい話ではありません。
しかし、それを払い続けることは顧客の立場で見れば損よりほかありません。
一見するとトラブルとは無関係な管理会社の変更事例に見えますが、顧客が高い管理費を払わされていた!と思った時点で、それはトラブルと言っても過言ではないでしょう。
事の発端は、マンションにちょっとした修繕が必要になり、修繕に関する見積もりを取ったところ、予想以上に高額な金額になってしまったことです。
それまでも何かと疑問に感じることがあったため、「こんなに高いなら大規模修繕のときはどうなるのか?」と思い、管理会社の変更を考え始めました。
また、修繕積立金に関しても、明らかその金額が少ないと感じたため、管理会社に将来的な見通しについて質問したところ、足りないものはどうしようもないという返答が来たといった事例があります。
確かに、積立金の値上げが出来ず、かといって他に収入があるわけではないという前提においては「どうしようもない」と返答してしまう管理会社側の気持ちもわかります。
ただ、管理費は下げられるのでは?という要望にも応えられないという結果が出てしまったため、最終的には安く管理出来る会社に変更となりました。
もっとも、管理会社変更の危機に至ってから値下げを言い出す業者が一概に悪いわけでもありません。なぜなら、元の金額が必ずしもボッタクリとは言えないためです。
より安い業者があったとしても、その業者の採算ラインがすべての業者に通用するものではなく、元の業者が赤字覚悟で最後の引き留めにかかる事はよくあります。
要するに最初に提示した金額が元々値引き可能な金額とは限らないという事です。
しかし、そうした事情は顧客には関係のない話です。管理組合としては、よりよい管理をより安くという姿勢で問題ないでしょう。
マンションの管理について住人に意見を聞くと、実は不満を持っているというケースは少なくありません。
ところが、管理組合にまで話が上がってくることは多くはなく、各々で不満を持ちながら時間だけが経過しているようです。
そのため、管理会社への不満を持つ住人がいるマンションではなかなか改善が進まず、さらなる不満を招いてしまうことがあります。
さらに深刻なのは管理組合として申し入れを行う頃には改善不可能なほど状態が悪化している事です。
こうしたケースは早めに対処する事で余計なトラブルを増やさずに済んだかもしれません。
小さな不満が点在しているのであれば、その背後にはもっと大きな問題が潜んでいる可能性があります。
また、クレームが絶えない体質の管理会社である可能性も考えられます。住民からの不満が出始めたら、管理会社変更も視野に入れて即刻対応すべきかもしれません。
住人から管理人の態度が悪い等の話を聞いたら、管理組合に携わる人は「なんだ、そのくらいの事か」と軽く考えないで、しっかりと対応しましょう。